相続手続

相続とは、人の死亡によって開始し、その人に帰属していた一切の権利義務を相続人へ承継させる制度をいいます。人はいつか死を迎えますが、その人が持っていた不動産・預貯金・現金などの資産のほか、借金などの負債を含めた一切の権利義務は、その後もこの世に残り続けて相続人に継承されることになります。しかし、上記の権利義務が誰に・どれだけの割合が承継されるかという決まりがなければ、残された家族や債権者・債務者ひいては社会経済が混乱してしまいます。そこで、「相続」という制度により、権利義務が一定のルールに基づいて引継がれる仕組みが規定されています。

死亡
葬儀の準備。死亡届は7日以内に提出
遺言書の有無の確認
自筆証書遺言は家庭裁判所での検認が必要
(法務局で保管していた場合を除く)
相続人・相続財産の調査
戸籍収集、相続財産の評価、財産目録の作成
相続放棄・限定承認の検討
3か月以内
多額の負債を抱えていた場合など
準確定申告
4か月以内
故人に個人事業などの所得があった場合は申告
遺産分割協議
相続人全員で、遺産をどう分けるか話し合う
(遺産分割協議書の作成)
相続税の申告・納付
10か月以内
相続税がかかる場合、申告と納付が必要
相続登記・預貯金等の解約
相続登記は原則3年以内
遺産分割協議書、もしくは遺言書が必要

各種手続について

① 相続登記

相続登記とは、亡くなられた方が所有していた土地や建物の名義を、相続人名義に変更する手続です。相続登記をしないまま放置すると、将来売却や担保設定をする際に手続が進められなかったり、次の相続が発生して関係者が増え、手続が複雑になることがあります。また、2024年4月から相続登記は義務化されており、原則として不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。

② 相続人・相続財産の調査

相続手続を進めるには、まず誰が相続人になるのか、どのような財産があるのかを確認する必要があります。相続人の調査では、亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍を集め、法律上の相続人を確定します。相続財産の調査では、不動産、預貯金、有価証券、負債などを確認し、手続に必要な資料を整理します。相続人や財産の確認が不十分なまま手続を進めると、後から協議のやり直しが必要になることもあります。

③ 遺言書の作成

遺言書は、ご自身の財産を誰にどのように引き継がせるかを、あらかじめ明確にしておくための大切な書類です。遺言書を作成しておくことで、相続人間の争いを事前に防止し、相続発生後の手続を円滑に進めやすくなります。不動産を特定の方に引き継がせたい場合、相続人以外の方に財産を遺したい場合、家族関係が複雑な場合などには、遺言書の作成を検討する価値があります。

④ 家庭裁判所の手続

相続では、家庭裁判所での手続が必要になる場合があります。代表的なものが、相続放棄と遺言書の検認です。相続放棄は、借金が多い場合などに、相続人としての地位を放棄する手続で、原則として自己のために相続があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。また、自筆証書遺言が見つかった場合には、家庭裁判所で検認手続が必要となることがあります。期限や必要書類の確認が重要となるため、早めの準備が大切です。

⑤ 遺産分割協議書の作成

遺産分割協議書とは、相続人全員で遺産の分け方を話し合い、その内容を書面にまとめたものです。不動産の相続登記、預貯金の解約、有価証券の名義変更など、多くの相続手続で必要となります。協議書には、誰がどの財産を取得するのかを明確に記載し、相続人全員が署名押印します。内容が不明確だったり、必要な記載が不足していると、金融機関や法務局で手続が進まないことがあります。

⑥ 預貯金の解約払戻し

亡くなられた方名義の預貯金は、金融機関が死亡の事実を把握すると、原則として口座が凍結されます。その後、預貯金を解約・払戻しするには、戸籍、相続人の印鑑証明書、遺産分割協議書、金融機関所定の書類などが必要となります。金融機関ごとに必要書類や手続方法が異なるため、複数の口座がある場合には手続が煩雑になりがちです。相続人全員の協力が必要となるケースもあります。

⑦ 有価証券の名義変更

亡くなられた方が株式、投資信託、債券などの有価証券を保有していた場合には、証券会社や信託銀行で相続手続を行う必要があります。手続では、相続人を確認するための戸籍、遺産分割協議書、相続人の本人確認書類、各金融機関所定の書類などが求められることがあります。有価証券は、預貯金のように単純に解約して現金を受け取るだけでなく、相続人名義の証券口座へ移す手続が必要となる場合があります。また、株式や投資信託をそのまま引き継ぐのか、売却して現金化するのかについて、相続人間で事前に確認しておくことが大切です。

各士業における相続手続の業務範囲

業務内容 司法書士 弁護士 行政書士 ※1 税理士
相続登記
(不動産の名義変更)
△ ※2 × ×
法定相続人調査
(戸籍謄本等の収集)
相続財産調査
(残高証明書等の収集)
相続放棄の申立 △ ※3 × ×
遺言検認の申立 △ ※3 × ×
遺産分割協議書の作成 △ ※4 △ ※4 △ ※4
相続税の申告 × △ ※5 ×
預貯金の解約払戻し
有価証券の名義変更
自動車の名義変更 × × ×
相続人間の紛争解決 △ ※6 × ×

※1 
行政書士は、法的紛争・税務申告・登記申請に関する業務を除き、遺産分割協議書等の書類作成に対応できる場合がある。
※2 
司法書士に任せるケースが多い。
※3 
司法書士は裁判所提出書類の作成はできるが、家庭裁判所での代理人にはなれない。
※4 
事案によって異なる。
遺産分割協議での代理交渉や、その交渉をまとめた遺産分割協議書の作成は、弁護士のみ可能。
※5
国税局長に税理士業務を行う旨の通知をした弁護士は可能。
※6 
認定司法書士に限り、140万円以下の遺留分侵害額請求に関する対応等は可能。